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作業療法士が語る睡眠について

睡眠と脳メンテナンス

日常生活を送るその過程で有害な老廃物が脳内で生じます。脳機能を保つにはこの老廃物を脳内から除去することが必要ですが、今まで脳には老廃物を除去する機構がないと考えられてきました。近年、グリンパティック系という脳の老廃物除去機構が発見され、この機構が睡眠時に活発化することがわかってきました。
睡眠は「疲れたから寝る」といった生理機能だけでなく、脳を元気に保つためのメンテナンスの役目を果たしているのです。

睡眠と朝の太陽光

朝の太陽光を浴びてから約15時間経過すると、脳内からメラトニン(睡眠誘導物質)の分泌が始まります。メラトニンの分泌から徐々に自然な眠気が出て入眠に至ることができるのです。ヒトの生体リズムは約25時間周期とされ、24時間周期で変化する外部環境とは1時間のずれがあります。この1時間のずれをリセットする鍵となるのが朝の太陽光なのです。
夜入眠したい時間に合わせて朝太陽光を浴びる習慣を工夫していきましょう。

睡眠と朝食

脳内から分泌されるメラトニン(睡眠誘導物質)の分泌量を増やすには、メラトニンの原料を多く摂取する必要があります。この原料が必須アミノ酸のトリプトファンなのです。
必須アミノ酸は体内で生成できないため食事で摂取するしかありません。食事で摂取してからメラトニンヘと合成させるまでの時間を考慮すると、夜の入眠に間に合わせるためには朝食でトリプトファンを含有する食物を摂取する必要があります。

睡眠と部屋照明

睡眠誘導物質であるメラトニンは光の明暗に依存して脳内で分泌されます。就寝前に明るい室内環境にいると、分泌が抑制され、入眠を阻害する要因となります。このため、就寝前に部屋照明をダウンライトや間接照明などに切り替え、光量を抑えた室内環境にすることが望ましいです。
また、光の波長もメラトニンの分泌を抑制してしまう重要な因子とされています。夜の照明は、暖色系の電球色にして過ごすのがおすすめです。

睡眠と運動

睡眠誘導物質であるメラトニンは、脳内でセロトニンから合成され夜に分泌されます。メラトニンの原料であるセロトニンは、抗重力筋を刺激することで増やすことが期待できます。抗重力筋とは、重力に抗する(体を支える)ために働く筋肉のことです。このため、日中に立位や立ち上がり、歩行など重力に抗する姿勢を取る機会を意識することが重要です。
睡眠の観点から、普段の生活や運動習慣を見直して良眠に向けて取り組みましょう。

監修

大雄会第一病院
リハビリテーション科 副技士長
東 久也(ひがし ひさや)
作業療法士

● 所属学会
一般社団法人 日本作業療法士協会、
一般社団法人 日本ハンドセラピィ学会

臨床の傍ら、養成校での講師や愛知県作業療法士会、一宮市リハビリテーション連絡協議会の運営委員など、多岐にわたる地域での活動を行っている。

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