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改善すべき骨盤の傾きについて

腕の挙がりと骨盤の関係

「腕が挙がりにくい」ことを、歳のせいだと思っていませんか?実は、肩ではなく骨盤が原因の可能性があります。円背(えんぱい/猫背のこと)の方は、横から見ると骨盤が後ろに傾いています。そのような姿勢になると、肩甲骨の動きを妨げてしまうのです。上腕骨は肩甲骨と関節しているため、腕の挙がりに影響するのです。試しに、座った状態でお腹を突き出すように背筋を伸ばして腕を挙げてみてください。それだけでも腕の挙がりは変わります。

肩甲骨の動きと骨盤の関係

円背(えんぱい/猫背のこと)になる原因の一つに、骨盤が後方へ傾くことに伴う腰椎の後わん(腰が曲がること)があります。加齢に伴い股関節を曲げる筋肉が衰え、伸ばす筋肉も硬くなり縮むからです。円背になると、肩甲骨がそれぞれ左右に広がります。両側の肩甲骨を中心に寄せようとしても、動きにくいことがわかります。背筋を伸ばして骨盤を起こして同じことをすると、肩甲骨は内側に寄ります。肩甲骨の動きには、骨盤の位置が大きく影響するのです。

良い姿勢の基本は骨盤から

立位姿勢を横から見たとき、お尻が突き出た“反り腰”の人では骨盤が前傾、猫背の人では骨盤が後傾しています。良い姿勢では、骨盤は前傾でも後傾でもない中間位にあります。
座位でお尻に両手を滑り込ませると、左右の骨の出っ張り(坐骨)に触れることができます。座面と左右の坐骨の間にキッチンラップの芯を挟み、坐骨がしっかり当たるように意識して座ってみてください。骨盤は最適な中間位となり、姿勢が良くなります。

膝関節と骨盤の関係

骨盤後傾による円背姿勢(猫背のこと)は、O脚になる要因の つです。骨盤についている筋肉の関係から両脚は開き、太ももの内側の筋肉が慢性的な筋力低下を引き起こして、いわゆるガニ股になるからです。それに連動して膝は曲がった状態になりやすく、膝関節の内側には体重による負担がかかります。将来的には、膝関節の痛みにもつながる可能性もあります。骨盤は膝関節にまで影響を及ぼすため、姿勢を良くする習慣が大切です。

骨盤の傾きと大腿の筋肉が連動する仕組み

良い立位姿勢では、大腿前面の筋肉(大腿四頭筋)は緩んでいます。
骨盤が後方に傾くと、連動して膝が曲がり後方へとバランスが崩れますが、大腿四頭筋が反応して固くなることでブレーキがかかり姿勢を立て直してくれます。一方で、立位バランスを保つためには、この筋肉は常に緊張することになり、膝の曲がりを制限します。着座の際、“尻餅をつくように勢いよく座ってしまう” という時は、このような原因が考えられます。

監修

総合大雄会病院
リハビリテーションセンター 技士長
川本 徹(かわもと とおる)
作業療法士

● 所属学会
一般社団法人 日本作業療法士協会、日本作業療法士連盟
一般社団法人 日本股関節学会

臨床の傍ら、大学において運動器疾患のリハビリテーションについて講師(整形外科系障害学・作業療法評価学・作業療法評価学演習など)も務める。

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