ハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR®)とは?
放射線治療による副作用の低減
放射線治療を行う際の主な有害事象(副作用)の一つに、直腸への影響(直腸有害事象)があります。一例として、放射線性直腸炎や放射線性膀胱炎が起こります。これは前立腺の周辺臓器である直腸や膀胱にある程度の放射線が照射されるためです。このような放射線の影響(被ばく)を低減させる処置が、ハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR®)留置術です。
通常、前立腺と直腸は完全に隣接しているため、1mm以下の隙間にハイドロゲルスペーサーを注入し、前立腺と直腸の間を1~1.5cm程度離すことで直腸に照射される放射線を減少させます。留置されたハイドロゲルは、放射線治療中(約3ヵ月間)はスペースを維持し、その後体内に吸収され消失します。
ハイドロゲルスペーサーの主成分はポリエチレングリコール(無毒)からなり、化粧品の乳化剤や便秘治療薬など医薬品や化粧品の材料にも用いられています。
ハイドロゲルスペーサーの主成分はポリエチレングリコール(無毒)からなり、化粧品の乳化剤や便秘治療薬など医薬品や化粧品の材料にも用いられています。
留置方法について
手術室で全身麻酔もしくは腰椎麻酔(診察の上判断致します)で行います。砕石位(足を広げる体位)になり、肛門から超音波の機械を挿入します。超音波で前立腺を確認しながら肛門の上部(会陰部)から針を穿刺します。針を前立腺と直腸の隙間に進めたら、生理食塩水を少量注入して空間を作り、その後ハイドロゲルスペーサーを注入します。注入されたスペーサーは速やかに体内でゲル化します。
副作用について
ハイドロゲルスペーサー留置術に伴う副作用は、便意の切迫感、直腸出血、下痢、アレルギーなどがありますが、ごく軽度なものを含めて発生頻度は約10%ほどとされています。