ダヴィンチとは
©Intuitive Surgical, Inc.
当院は認定施設として“ダヴィンチ Xi”を用いたロボット支援下手術を行っています。肺がんに対する、肺葉切除術、より複雑な手術である肺区域切除術に加えて縦隔腫瘍切除術や胸腺摘出術をロボット支援下で行っています。
現在、外科手術における低侵襲化(=体に優しい手術)が進んでいます。同じ手術を受けるのであれば、小さな傷で、より低侵襲な手術を望むのは当たり前のことです。呼吸器外科の手術も、以前の開胸手術からカメラを用いて行う胸腔鏡下手術へと進化してきました(“肺がん 詳細や手術について”をご参照下さい)。そして、ロボット支援下手術は、今までの胸腔鏡下手術の利点をさらに進化させ、より安全に、そして正確に手術を行える技術であると考えています。
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当院には最新の手術支援ロボットである「ダヴィンチ Xiサージカルシステム(Intuitive Surgical、Sunnyvale、CA)」があります。これは従来のダヴィンチシステム=「ダヴィンチ Si」をあらゆる面で凌駕しており、手術の安全性を担保する上で患者さんにとっても大きなメリットになります。
ダヴィンチは、多関節を持つロボットアームと鮮明な3次元画像 (3D)を有した、最先端の手術支援システムです。現在の胸腔鏡下手術は棒の先に小さなピンセットやハサミのついた器具(鉗子といいます。図1)を用いて手術を行っています。例えるなら、“さい箸”を用いて、腫瘍や肺を切除しています。
図1:胸腔鏡下手術用鉗子
図2:鉗子のついたロボットアーム
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ダヴィンチでは多関節を持つ“ロボットアーム(図2)”を用いて手術を行うため、外科医の“手”を胸の中に入れて手術を行っている状態に近いのです。この違いは鉗子の先に人間の手首と同じように関節があり、狭いスペースで器具を自由に動かせる点にあります。人間の指にあたる鉗子の先端には様々な形状があり、多くの機能を持っています。
ダヴィンチの目となるカメラの太さは約8mmで、その中に右眼用と左眼用の2つのカメラが内蔵されています。つまり、ダヴィンチの3Dビジョンは、映画館などでメガネをかけて見る“疑似3D”ではなく、われわれ人間が実際に目で見ているのと極めて近い映像を提供します。このように、ダヴィンチでは精密に動く鉗子と精細な3D画像により正確な手術が可能となり、ひいては複雑な手術をより安全に行うことができると考えています。
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ダヴィンチを用いた手術
当科では、“ダヴィンチ”を用いて、前縦隔腫瘍・胸腺摘出術および、肺がんに対する肺葉切除術と肺区域切除術を行っています。
前縦隔腫瘍
前縦隔とは、胸骨(胸の真ん中をたたいた時にある硬い骨です)という“天井”と、左右は肺という“壁”に挟まれ、“床”は心臓で出来ているという、非常に狭くデリケートな場所です(“縦隔腫瘍”をご参照ください)。この狭い場所にできた腫瘍を切除するうえで、“手首”の役割を担う関節を有する手術支援ロボット“ダヴィンチ”は、高い操作性により正確で安全な手術を可能にすると考えています。
ダヴィンチの縦隔操作
肺がん
肺がんの手術は、さらなる低侵襲化を求めて、傷の数や大きさだけでなく、切除する肺の大きさを少なくする手術を行っています。これを従来の“肺葉切除術”に対して“肺区域切除術”と呼んでいます(“肺がん 詳細や手術について”の「複雑になっていく、肺がんの手術」をご参照ください)。肺区域切除術は切除する血管が細かく、切り取る肺組織が複雑に入り組んでいます。これらを正確に見つけて切除するために、“目”となる“ダヴィンチ”の鮮明な3Dビジョンと“手”となる精密なロボットアームが大きな役割をはたすと考えています。また、複雑なことが容易にできれば、ミスを少なくすることもできるので、患者さんにもメリットはあると考えています。患者さんにとってのデメリットとしては1~2cmの傷が一つ増えることと、手術時間が30~40分長くなることがあげられます。
ロボット支援下手術が可能かどうかは、患者さんの、病状、病気の進行程度、持病の有無などによって適切に判断しています。必ずしも患者さんのご希望に沿えるわけではありませんが、ロボット支援下手術に関する質問などがありましたら、外来にて医師にお尋ねください。