緑内障とは
緑内障は視野が狭くなる病気で、日本人の失明の原因の第一位の病気です。自分で症状を自覚する頃には既に進行している場合が多く、重症になると失明の危険もあるため、早期発見する必要があります。
緑内障の症状
緑内障は、「視野」が欠けて狭くなる病気です。一度視野が欠けてしまうと、治療を行っても戻すことが困難です。主な原因は、房水※を排出できず眼圧が上昇することで、視神経や網膜神経線維が障害され進行します。活字を読んでいるときに、文字が黒く抜けて見にくいところがあったり、歩行中、障害物に気が付かずに、ぶつかることがある場合は緑内障の可能性があります。
※房水とは、毛様体から分泌され、角膜・水晶体・硝子体など血管のない組織に栄養を与える役割をもつ液体です。目の形状は、この房水の圧力によって保たれ、これを眼圧と呼びます。
※房水とは、毛様体から分泌され、角膜・水晶体・硝子体など血管のない組織に栄養を与える役割をもつ液体です。目の形状は、この房水の圧力によって保たれ、これを眼圧と呼びます。
視野の欠け方には個人差がありますが、たとえば図1のように進行していきます。灰色の部分が視野の欠損部分です。ー度でも視野が欠けてしまうと、治療をおこなっても元に戻す事はできません。視力が良くても視野が狭くなってしまうと、くっきりと見える範囲が狭いため見え方が悪くなってしまいます。つまり視力が良くても「緑内障」としては進行している場合があるのです。
図1 視野の欠け方のイメージ
緑内障の種類
I.原発緑内障
1.正常眼圧緑内障
眼圧は正常範囲内であるが、視神経や網膜神経繊維が障害を受ける緑内障。平成12年に岐阜県多治見市で行われた緑内障疫学調査にて日本人に最も多い病態とされました。
・前視野緑内障
眼底検査において緑内障を示唆する異常がありながらも、通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態を、前視野緑内障と称します。
・前視野緑内障
眼底検査において緑内障を示唆する異常がありながらも、通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態を、前視野緑内障と称します。
2.原発開放隅角緑内障
房水の出口である隅角は広いが、隅角(ぐうかく)での排出がされにくい状態になっていたり、房水が多く作られるなどの影響で眼圧が上昇する緑内障。
3.原発閉塞隅角緑内障
加齢変化や遺伝性要因により隅角が狭くなり、房水の流れが阻害され、眼圧が上昇する緑内障。手術治療が第一選択となります。
II.続発緑内障
他の眼疾患、全身疾患、あるいは薬物使用が原因となり眼圧上昇を生じている緑内障。原因疾患の治療が第一選択となります。
III.小児緑内障
小児期に発症する緑内障で、成人と同じ原発型と続発型に分けられます。なかでも、生まれつきの先天緑内障の場合は、手術療法が第一選択です。
検査
視力・眼圧検査
眼圧により治療内容が変化するため、定期的にチェックをします。
視野検査
診断および治療において重要な検査です。緑内障の進行具合の目安となります。初期変化を捉えることに優れた静的視野検査と、広さを調べる動的視野検査を併用しながら行います。
光干渉断層計(OCT・OCT Angiography)
視野障害が生じる前に視神経や網膜神経繊維の障害が生じるため、網膜の厚み・血流の状態を調べることで、早期発見・治療につながります。前視野緑内障の診断において重要な検査です。
眼底検査
視神経がどの程度障害されているかを調べます。
検査機器について
治療
緑内障は、眼圧を下げることができればその進行を防止したり、遅らせることができる可能性がある病気です。ただし、一度障害されてしまった視神経は、回復することはありません。早期に緑内障を発見できれば、また視神経の障害が軽いうちに適切な治療を受けることができれば、失明に至る危険性はぐっと少なくなります。
緑内障治療の目的は、視野障害の進行を止める、または遅らせることにより、患者さまの視覚の質(Quality Of Vision:QOV)と、それに伴う生活の質(Quality Of Life:QOL)を維持することです。今の視神経、視野を守るための治療を早期から実施することは重要です。緑内障の病期・病態、眼底変化や視野障害の程度などから、それぞれの人に適した治療方針を決定していくことがとても重要になります。
緑内障治療の目的は、視野障害の進行を止める、または遅らせることにより、患者さまの視覚の質(Quality Of Vision:QOV)と、それに伴う生活の質(Quality Of Life:QOL)を維持することです。今の視神経、視野を守るための治療を早期から実施することは重要です。緑内障の病期・病態、眼底変化や視野障害の程度などから、それぞれの人に適した治療方針を決定していくことがとても重要になります。
点眼治療
点眼治療で眼圧を下げることにより、緑内障の進行を遅らせることができます。
レーザー治療
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
緑内障の病型の中で最も多い、原発開放隅角緑内障の患者さんの眼圧を下げる治療法です。房水の流れを妨げるメラニンだけを選択的に減らして、排出量を増やし、眼圧を下げます。合併症のリスクは非常に少なく、副作用もあまりありません。
手術治療
点眼治療だけでは眼圧下降の効果が限られる場合や、急激に進行した緑内障、副作用により点眼治療困難な症例に対して、手術を行います。
手術
緑内障に対するいろいろな治療法から、患者さまの症状に合わせて選択して、手術を行います。原則的に、初期は低侵襲緑内障手術(MIGS)で対応し、進行例は線維柱帯切除術やインプラント手術などの濾過手術で対応いたします。当院での症例数は年間100例を超えます。
低侵襲緑内障手術(minimally invasive glaucoma surgery:MIGS)
①iStent(アイステント)を用いた水晶体再建術併用眼内ドレーン手術
iStentとは房水の出口である隅角に挿入するチタン製のパイプです。挿入することで房水の排出を改善し、眼圧を低下させ安定させることが期待されます。0.36mmと小さく、挿入時の痛みもありません。
②カフークデュアルブレードを用いた線維柱帯切開術
カフークデュアルブレードとは、2本の刃先で線維柱帯(眼の中の水の出口)を切除することにより水の流れをスムースにし、眼圧を下げることを目的とします。白内障と同時に手術をすることで、眼圧加工効果がより得られます。
結膜(白目の部分)を傷つけずに角膜の小さな創口から器具を挿入して切除ができる、負担の少ない手術です。線維柱体を切除する際には必ず出血しますので、手術後視界がぼやけることがありますが、数日で回復します。
結膜(白目の部分)を傷つけずに角膜の小さな創口から器具を挿入して切除ができる、負担の少ない手術です。線維柱体を切除する際には必ず出血しますので、手術後視界がぼやけることがありますが、数日で回復します。
③谷戸氏マイクロフックを用いた線維柱帯切開術
小さな切開創よりマイクロフックを挿入し、線維柱帯を切開する手術です。
カフークデュアルブレード同様に出血が起こるので手術後視界がぼやけることがありますが、数日で回復します。
カフークデュアルブレード同様に出血が起こるので手術後視界がぼやけることがありますが、数日で回復します。
濾過手術
①線維柱帯切除術
一部の線維柱帯を切除することで房水を通常とは別の経路から逃がし、眼圧をさげる手術です。術後の管理が重要となります。
②Express (エクスプレス)を用いたチューブシャント手術(プレートのないもの)
金属製のチューブを用い新たな流出路を作成する、虹彩切除の必要がない安全な手術です。また術後の合併症も他の手術に比べ比較的少ないのも特徴です。
緑内障治療用インプラント挿入手術
③Ahmed Glaucoma Valve (アーメド緑内障バルブ)を用いたチューブシャント手術(プレートのあるもの)
難治性の緑内障に用いる手術で、プレートを用いることにより流出路の閉塞を防ぐことが特徴です。